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宮田事務所

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どこかではなすはなし

 

向田邦子 おしゃれの流儀 (とんぼの本)

向田邦子 おしゃれの流儀 (とんぼの本)

 

 

私は一番好きな作家は誰かと聞かれたら、迷わずに「向田邦子」と言う。

 今回のこの本は、"本に疲れた時になんとなく手にとってしまう”1冊。

 

私は、ものすごくペーペーだけどライターの仕事に就いている。基本的には毎日文章を書いたり、出来上がっている文章の校正をしたりする。大なり小なり、月に約26本の原稿を日本中のどこかへ提出して、お金をもらう。


時々自分が書いたものも含めて、色んな文章に疲れる時がある 。今後のこととか、妙にリアルな現実に打ちのめされて落ち込む。妄想だから理想は高くすればいいのになと思いながら、そうもいかないことを分かって、落ち込む。そういう時は、読書も文章も、どの活字も、なんだか息苦しくなる。 

 

でも、この本は別だ。逆に何にもしたくない時にいつも目に入って、手にとってしまう。向田邦子という女性作家の、素敵なお洋服をただ眺めるだけ。この本のト書きは読まないことが多いので、文章に関してはうろ覚え。この本は、ただ写真を見たい。

 

ここに載っている服は3,40年近く前の服や鞄、靴。でももし街の中で、このファッションの人が歩いていたら、あの人素敵だなと思うと思う。それはきっと私だけじゃないと思う。

 

明日着てみたい服が、最後まで詰まっている。しかもそれを向田邦子が選んで着ていたというところに、何だか励まされた。憧れるっていう力は無条件にリセットしてくれる。

 

私が思う向田邦子のすごいところは、彼女の頭の中にはいつも何かイメージがあって、まずそれがかなり精密なデザインであること。それからそれが正確に具現化できることだと思う。それは小説でも、エッセイでも。彼女の手から生まれるものはすべて。乱れているような描写も、いつも品がある。

 

この本を見てると服も同じだったんじゃないかと思う。どの服も、誰が着ても似合うものではなくて、向田邦子のために作られたような。向田邦子が着ると1番しっくりくるような服ばかり。

 

この本の主役は、もちろん向田邦子だから意味がある。でも、作家としてどうこうとか、エッセイストどうこうだとかを置いといたとしても。ただ単純に「そういう女性になりたい」って思える本だった。女性として、見知らぬこの女性のファッションに憧れた。

 

いつかこれになりたいって、しがらみを知らずにあっけらかんと言うような、そういう子どもの頃の何かに憧れた気持ちへとリセットできるような。そういう本。

 

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